
未来への願いを込めた幻想的な”あかり”。2年ぶり開催の「和のあかり×百段階段」に行ってきた

アートイルミネーション「和のあかり×百段階段 2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~」が2021年7月3日(土)から9月26日(日)までの期間、ホテル雅叙園東京(目黒区)館内にある、東京都指定有形文化財「百段階段」にて開催されます。2015年から5回開催、昨年はコロナ禍で中止となったこの展覧会は、累計来場者数35万人以上の人気イベントで。待ちに待った2年ぶり6回目の開催となります。

編集部では開幕直前の「和のあかり×百段階段 2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~」の会場を取材、一足早く、この目黒最強のSNSスポットの楽しみ方をご紹介します。
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取材ご協力
- ホテル雅叙園東京さま
- 記事中の写真はすべて報道内覧会にて編集部で取材したものです。
前回、前々回と複数回取材してきたからわかる!混雑するの?
編集部は、例年この「和のあかり×百段階段」を会場取材してきました。どこをどう撮ってもSNS映えになる魅力的すぎる同展は、毎年特に土日は行列ができるほどの混雑ぶりです。
が、今回は新型コロナウイルス感染予防を目的として、混雑緩和のために入場制限が行われています。担当者さまからは、エレベーターの定員数を制限するほか、館内の来場者数をスタッフさんで常に把握しながら調整しているということを伺っています。

ということは多少待つことはあっても館内ではかなり快適に見学ができるということになります。編集長個人としては平日午後が狙い目なのかなと思っていますが、絶対確実にゆったり観たい!という方は、人数限定のスペシャルチケットも発売されますので、そちらもチェックしてみると良いかと思います。(詳細は公式サイトをご確認下さい。)
ついでに一眼レフの人は広角があるとなお良いです
展示会場は全期間、全時間帯で撮影がOK。浴衣姿が映えるフォトスポットも多数。空間いっぱいに広がる展示空間を収めるには、広角レンズがあるとかなり幸せになります。階段をあおりでとったりするのもいい感じに。今はスマホも相当進化してますけども…。※ただし今回の取材では諸般の事情で「24-105mm」のみを使用しています…。
会場レポート:「和のあかり×百段階段 2021」
2年ぶりの開催となる今年のテーマは「ニッポンのあかり、未来のひかり」。サブタイトルが「和」ではなく「日本」となっているように、コロナ禍により日々制限されてしまった生活の中、まもなく戻ってくる日常のあかりに特別な思いを馳せた展覧会です。

日本五大風鈴や切子、陶芸、月山和紙、琉球ガラスなど日本各地の様々なあかりアートが集結し文化財を彩ります。階段を上るごとに「まつりのあかり」「ガラスのあかり」「紙のあかり」「木のあかり」「土のあかり」といった全く違う世界観を巡ることで、まるで日本を旅しているような体験ができます。最上階「頂上の間」では、柳井金魚ちょうちん祭りの『金魚ちょうちん』が部屋いっぱいに並ぶ「金魚のあかり」がやがて訪れる平穏な日常への祈りとして未来を照らします。
ダイジェスト動画
今回、編集部では本展企画担当の柚木さんを単独取材してメッセージをいただいています。メッセージは動画の後半で。

この後、各部屋を順に紹介していきますが各段落につけられたサブタイトルは編集部が感想とともにつけた「キャプション」ですので、展示の正式名称とはまた別のものですので、その点ご注意下さい。では、一番下の階から順に会場を紹介してきます!
涼し気な森に癒やされる(十畝の間)

十畝の間 編集部撮影
テルミンと笙の音が流れる最初の部屋、十畝の間は「森のあかり」がテーマ。折り紙と光による大きな作品『ORITERASU』(折り紙作家 布施知子氏&照明デザイナー 阿曾正彦氏)が癒しの森を作り出します。光沢のある床面にはオブジェが映り込み、不思議な湖のようにも、幾何学模様のようにも見えます。
下の写真も、まるでCGのようですが折り紙と光のなせるワザです。

十畝の間 編集部撮影
まつりの空を彩る、かぐや姫の激情(漁樵の間)

熊本・山鹿の「山鹿灯籠浪漫・百華百彩」を使った七夕の空間アート
漁樵の間 編集部撮影
毎回、展示のハイライトクラスの大型作品が配される漁樵の間では、「彩色木彫板で語る七夕~かぐや姫の記憶~」として七夕の空間アートが登場。かぐや姫をイメージさせる「山鹿灯籠浪漫・百華百彩」(熊本・山鹿)の和傘と着物のコラボアート、かんざし作家・螢氏による「蓬莱の枝」の他、来場者が七夕の短冊に願い事を記す参加型の演出なども。
蓬莱の枝の展示ケースは本物の長持を使用しています。また、長持のフタの右端にかけてあるのは「火鼠の衣」を表現しているという遊び心も。写真では見づらくてすみません!

本展のために作られたオリジナル・サウンドトラック「HIKARI」

漁樵の間 編集部撮影
本展のために作られたオリジナル・サウンドトラック「HIKARI」(ヨダタケシ氏)。百段階段の階段を上がりながら、主人公(来場者)が過ぎ去った夏の思い出に包まれながら癒やされていく、というメインストーリーを軸としています。各部屋ではテーマにあわせた別々の楽曲が流れており、漁樵の間はボーカルに片山千穂氏を迎えた「OMOI」。”かぐや姫が貴族たちの求婚を受けなかったのは、実は想い人が他にいたのではないか”というストーリーの曲は、切ない気持ちを裏腹にひたすら美しい祭りと夜空の風景を描き出します。
五感で感じる、竹林の小宇宙(草丘の間)

今度は「風のあかり」がテーマの草丘の間。夜の竹林に迷い込んだ情景自体を作品とし、風をテーマに構成されたいけばなは、大塚理航氏によるもの。


このオブジェを囲む形で日本5台風鈴の音色が響きわたります。古来より風鈴はその音が届く範囲の厄を払うとされていまる。オリジナルサウンドトラック「KAZE」で音無史哉氏の奏でる笙の音色、アロマの香りとあいまって、遠い夏の記憶が懐かしくよみがえる、深い気持ちになる空間です。
ニッポンの職人がつむぐ未来へのひかり(静水の間)
静水の間のテーマは「ガラスのあかり」です。江戸切子以外にも天満切子や琉球ガラスなどニッポンのガラスのあかりを鑑賞できます。
中央は琉球ガラス(琉球ガラス村)。南国ならでは色合いの作品は1,300℃の窯とガラス職人の感性が生みだせる沖縄ならでの感性が光ります。


こちらは珍しい黒い切子作品。昭和46年に創業したミツワ硝子工芸は、多彩なカット技術を持つ職人集団。20代、30代の若い職人で構成させれているというのも特色で、いまなお新進気鋭の現代の工房として新作を世に送り出し続けています。
「紙」のあたたかさを感じる展示(星光の間)
オリジナル・サウンドトラック「JI」のゆったりしたテルミンの音色に包まれる星光の間のテーマは「紙のあかり」。紙をテーマにした優しく味わい深い空間が広がります。

星光の間 編集部撮影

部屋の中の座布団も展示品。「おじゃみ座布団」の「おじゃみ」は関西ではお手玉と言うそうで、そのお手玉をに着想を得て生まれたもので、正座に向いているということです。座れる展示ということなので寛ぎの時間を愉しんでみては。

未来へのトンネル(星光の間・特別展示)
スタンレー電気による特殊照明。未来へのトンネルのような空間を表現しています。

文化財の中に異空間が現れました。
かげから漏れ出る光の跡(清方の間)
テーマは「木のあかり、土のあかり」。ひょうたんや「土」など、さまざまな自然の素材を使ったひかりの表現を楽しめます。
入り口のあかりはネコとふくろう。

作品から漏れ出るひかりの美しさを堪能。こうしてみると影も光なのだなと気が付きます。


これは北島拓弥氏による、ひょうたんのランプ。自ら畑を耕して栽培したひょうたんをランプに加工、素材をイチから作っていることになります。

金魚ちょうちんに未来への祈りを託して(頂上の間)

最上階・頂上の間は「金魚のあかり 未来のひかり」として、明るい未来のひかりへ、縁起のよい金魚尽くし。窓際を埋め尽くす『金魚ちょうちん』は、山口県柳井市の夏の一大イベント「柳井ちょうちん祭り」のもの。

頂上の間の奥には、御本尊?のように矢萩ひかる氏のフェルト金魚作品が鎮座。こちらも見応え十分。

コロナ対策もあり今回は頂上の間の窓を開けていることもあって開放感のある展示となっています。柳井市のお祭りではこの金魚ちょうちんが4000個も飾られるということで、昨今の状況が一段落したら、ぜひ一度本場も観てみたいと思わせる展示でした。


以上…ではなくて「8番目の部屋」もお忘れなく!
百段階段”8番目の部屋” ミュージアムショップはすみずみまでチェックしたい!

百段階段のミュージアムショップが特長的なのは、展示テーマと関連/派生したアイテムが並んでいる点で、展覧会ごとに毎回レイアウトも変更されます。展示室になかった作品がショップにはあったりと、もうひとつの「和のあかり」展として楽しめます。

また、持ち帰れるミュージアムということで、出展作家さんの作品を購入することもできるのも魅力。なお、展示している作品でも購入できる場合があるそうなので、現地でどうしても気に入ってしまった場合はスタッフさんに問い合わせてみてください(非売品のものもあります)。
日本5大風鈴のひとつ、鋳物・真鍮風鈴(能作)。富山県高岡市の美しい風鈴の音色を草岡の間で堪能して、さらに家にお持ち帰りできるなんて素敵すぎる。

こちらのアイスクリーム用の「雪の花」は展示会場には置いていない品。

ちなみに、編集長は以前購入した中金硝子総合さんの硝子切子を愛用しています。このぐい呑み「逆さ富士」は今回「静水の間」に展示されています。

商品の紹介
- ※一部抜粋 ※いずれも税込み
- 金魚ちょうちん 大 2,750 円 / 中 1,980 円 / 小 1,760 円
- 風鈴(小田原風鈴 1,650 円~ / 南部富士型風鈴 2,750 円 / 江戸風鈴 1,870 円~ /
- 能作の鋳物風鈴 4,840 円~)
- オリジナルアロマ(夏、薫ル)アロマミスト(30ml)1,100 円 / アロマオイル(5ml)2,300 円
- 水うちわ 7,700 円 ・ひょうたんランプ 16,500 円~ ・谷俊幸 SEN ランプ 41,800 円
- 籠染灯籠 77,000 円 ・ヨダタケシ オリジナルサウンドトラック「HIKARI」 1,870 円 他
編集後記

超ロング会場レポート、ここまでお読みいただきありがとうございます。百段階段のレポートは、見所が多すぎるために毎回極端な文字数になりがちです(笑)。個人的には、漁樵の間の「かぐや姫」から草丘の間の「竹林と日本五大風鈴」の流れは、涙腺が緩みそうになる感動でした。どこを撮影しても映える展示ですが、そこで終わりではなく、見る人の心にニッポンのあかりが、未来への希望が灯るような、思い出を通じて未来へ向いて進む勇気をもらえるような、そんな素敵な展覧会です。螺鈿のエレベーターホールから、頂上の間、そしてミュージアムショップまで、ぜひ会場でゆっくりと日本の夏を愉しんでいただければと思います。
「和のあかり×百段階段 2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~」開催概要
- 展覧会名:「和のあかり×百段階段 2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~」
- 開催期間:2021年7月3日(土)- 9月26日(日) 会期中無休
- 開催時間:11:30-18:00(最終入館17:30)
- ※土曜日及び、7月22日・23日・8月8日-13日・9月19日は20:00まで(最終入館19:30)
- ※8月21日は17:00まで(最終入館16:30)
- 会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
- 料金
- 当日券1,200円
- 特別前売券1,000円(7月2日まで館内(16:30迄)及び公式オンラインチケットにて販売)
- 学生600円(要学生証呈示)
- 未就学児無料
- 販売窓口
- ホテル雅叙園東京[一般入場券]
- 公式オンラインチケット[一般入場券、グッズ付チケット、日時指定入場券]
- 主催:ホテル雅叙園東京
- 協力:スタンレー電気株式会社
- お問合せ:03-5434-3140(イベント企画10:00 – 18:00)
出展作家一覧(順不同)
越谷 籠染灯籠(中野形染工場+ハナブサデザイン) / 伏谷商店(名古屋提灯)/ 山鹿灯籠浪漫・百華百彩(熊本・山鹿)/ ORITERASU(折り紙作家 布施知子&照明デザイナー 阿曾正彦) / 榮(かんざし作家) / 鈴木盛久工房(南部鉄風鈴) / 篠原風鈴本舗(江戸風鈴) / 柏木美術鋳物研究所(小田原風鈴) / 能作(鋳物・真鍮風鈴) / 明珍本舗(火箸風鈴) / 大塚理航(いけばな 古流かたばみ会) / カミノシゴト(水うちわ) / 月夜野工房(ガラス) / ミツワ硝子工芸(江戸切子) / 玻璃匠 山田硝子(江戸切子) / 中金硝子総合(江戸硝子) / 廣田硝子(ガラス) / 切子工房RAU (天満切子) / 島津興業(薩摩切子) / 琉球ガラス村(琉球ガラス) / ひだか和紙(土佐和紙) / せいのまゆみ(月山和紙あかり作家) / 高山しげこ(漉き紙の灯り) / 和傘工房「朱夏」(和傘あんどん) / 洛中髙岡屋(おじゃみ座布団) / 谷 俊幸(照明作家) / 北島拓弥(ひょうたんランプ作家) / 中田雅巳(陶芸家) / 猿田壮也(陶芸家) / 柳井金魚ちょうちん祭り(山口・柳井)/ 矢萩ひかる(フェルト金魚作家) / ヨダタケシ(音楽)
東京都指定有形文化財「百段階段」
「百段階段」とは通称で、ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園3号館にあたり、1935(昭和10)年に建てられた当館で現存する唯一の木造建築です。 食事を楽しみ、晴れやかな宴が行われた7部屋を、99段の長い階段廊下が繋いでいます。 階段は厚さ約5cmのケヤキ板を使用。 階段で結ばれた各部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれています。