[ペンギンのゴハンあげ写真] すみだ水族館が「エサ」と呼ばない理由とは
「へだてない」水族館だからこそ、いきものたちの「ゴハン」の準備もオープンで
2020年7月16日(木)に大規模リニューアルが行われ、リニューアルオープンを果たしたすみだ水族館。新設された「アクアベース」では天井の巨大なサイネージが目を引きます。
そして、写真の左側に写っているのが「キッチン」。その名のとおり同館のいきもの達の「ゴハン」を準備するスペースです。これまでバックヤードで行っていた、ペンギンやチンアナゴ、大水槽の魚たちなどの「ゴハン」の準備はこの設備で行われ、お客さんは実際に飼育スタッフの仕事の様子を見ることができます。この「キッチン」について、お話を伺ってきました。
素材の鮮度に気を配り、家族の健康を願うように丁寧に調理
いきものたちの「ゴハン」を準備する「キッチン」。「ゴハン」になる魚は、冷凍のままだと冷たすぎるので、キッチン内にひかれた人工海水を利用して解凍、食べやすい温度になるように調整されます。同じペンギンでも個々によって、好物が異なるそうで、飼育スタッフはそれらを細かく把握しながら「ゴハン」を準備していきます。1日にアジが30kg、シシャモが15kgも調理されるそうです。
また、全てオープンで行うため、飼育スタッフ以外は「キッチン」内に立ち入れないことを始め、調理台は1日3回も消毒を行うなど、衛生管理には徹底した工夫がなされています。誰がどのようにいきものたちの「ゴハン」を準備しているかを公開することは、いのちを維持する仕組み、大切さを考えるきっかけになるとともに、安心感があります。
すみだ水族館では「エサ」とは呼ばない
ところで、すみだ水族館ではいきものたちの食事のことを「ゴハン」と呼んでいます。いきものたちは家族、そして食べ物は水族館の命をつなぐものなので「エサ」とは呼びません。家族に食べてもらう「ゴハン」なので、放り投げたりしないで手渡しであげています。実際にペンギンの屋内開放水槽では、飼育スタッフたちがペンギンに「ゴハン」を上げているところを間近で見ることができます。
にぎやか!ペンギンの「ゴハン」の時間
「キッチン」で準備された「ゴハン」は一尾一尾手渡しでペンギンに。時期によって食べる量が変わるそうですが、取材時はペンギンの羽が生え変わる時期で、一日1.2キロものアジを食べるそうです。飼育スタッフは全てのペンギンの好みを把握しており、「ゴハン」を独占するようなことがないように、「作戦」をたてて「ゴハンあげ」に臨みます。
「ゴハン」を配る係・記録する係・離れたところから全体を見渡してチェックする係など、総勢5人で「ゴハン」を手渡ししていきます。
ちなみに、写真左手前で背中を向けているのも飼育スタッフ。水槽の外側から全体を見渡し、みんなが無事食べられるように気を配っています。誰が何を食べたかも確認しつつ、しっかりと記録していきます。
「”おはぎ”もってる。ずっともってる」「”はなび”はじめてたべたよ」「”あけび”が2」「”バジル”が2」「”ふじ”がいわし」「誰も気づかない。後で回収」「”ゆず”が3」「ごめん、アジがよかった?」
編集後記(記者の感想など)
いきものたちに「ゴハン」を手渡しする姿は、人間といきものの垣根を取り払った「大家族」の暮らしぶりに見えました。すみだ水族館の今回の大規模リニューアルのコンセプトは「へだてないこと」。これは単に、いきものを近くで見れるというだけの意味ではありませんでした。見る側、飼育する側、される側の垣根を取り払って一つの大家族、世界観を作り共有する、そんな水族館だなと思いました。
- 取材協力 すみだ水族館さま
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すみだ水族館 公式サイト
詳細についてはお出かけ前に公式サイトを必ずご確認下さい。