※2026年8月情報追記
天然記念物「奈良公園の鹿」。普通にあちこちにいるため、初見の人は本当に驚くことと思います。筆者はこの夏、奈良に2度連泊し、いわゆる観光スポットにはほとんど行かず、ひたすら「鹿活」を愉しんできました。この記事では、その体験をもとに、奈良公園の鹿に関する豆知識や鹿活のおすすめスポットなどを紹介します。ぜひ実際に奈良を訪れて楽しんでいただきたいですが、自由研究のネタにもどうぞ。
奈良の鹿が増えた理由とは
初めて奈良公園を訪れると、観光客と同じくらいの数の鹿に圧倒されるかもしれません。「奈良の鹿愛護会」が実施した2026年の調査によると、奈良公園には2024年7月16日現在で1,687頭の鹿が生息しています。これはこの記事が当初書かれた2024年の1,325頭から実に300頭以上もの増加となります。
近年の増加の理由としては、愛護会による保護活動に加え、草よりも柔らかい鹿せんべいによって歯の摩耗が遅れ、高齢になっても食べられるようになり、寿命が延びているという説もあります。これだけの鹿がいると交通事故も発生しており、2025年中に交通事故で命を落とした鹿は36頭、2024年に比べて7頭も増加しています。
奈良の鹿の頭数は、常に増加していたわけではありません。明治時代、新政府の県令による政策で、1873年にはわずか38頭にまで減少したこともありました。
奈良の鹿を飼っているのは誰?
奈良の鹿はすべて野生のニホンジカであり、観光地に生息する野生動物という珍しい存在。野生動物は「無主物」という扱いであり、基本的に誰のものでもなく、誰かが飼育しているというわけではありません。
歴史的には、春日大社が神鹿として鹿を管理・所有してきました。天然記念物「奈良の鹿」も、春日大社が所有者として申請されています。しかし、1980年前後に起こった「鹿は誰のものか裁判」において、春日大社は鹿の所有権に関する主張を取り下げています。背景には、鹿による食害で農家に発生する補償金の責任など、複雑な問題が関わっていたようです。
おすすめ鹿活ポイントは?
奈良公園には普通にたくさんの鹿がいます。編集長も「鹿活をするぞ!」と意気込んで奈良公園に乗り込んだものの、すでにホテルの窓から鹿が見えている状態だったので、あっという間に感覚がマヒしてしまいました。鹿は人間によく慣れているため、近づいても逃げることもなく特に苦労せず写真に映せます。猫よりも全然簡単と思って問題ないです。実際の鹿活を通じて印象に残ったポイントを10箇所ご紹介していきます。ポイントとして抽出しているものの、そこかしこに鹿はいますし、撮影などする場合の参考ということで目安にしてください。
1. 奈良県議会の向かい側、興福寺の世界遺産の石碑のあたり
いきなり奈良公園の入口のエリアです。鹿せんべいを売るワゴンがこのあたりにいることも関係して、朝から「鹿だまり」ができています。
飛火野で早朝撮影をしようと朝6時前に出ていって、8時すぎに戻ってきたらホテルの近くにびっしりいて驚きました。
2. 登大路園地入口
1のポイントから1ブロック行っただけの場所。鹿せんべい屋のまわりに待機しており、せんべいを購入した瞬間にパクついてくるガラの悪い子も…。
鹿せんべいを目視するか、手についた匂いに反応してずっとついてきたりします。登大路園地付近は特に鹿のフンにご注意を。
3. 登大路園地の三条通側と「なら仏像館」裏手
このポイントの角の鹿せんべい屋の回りにも群れでいることが多いです。169号を挟んだ向こう側は、国立奈良博物館 なら仏像館の裏手の芝エリアで、絶好のエサ場であり、ここへ向かって道路を横断する鹿も。
4. 奈良博物館の前
奈良博物館の前にもバス通り沿いの木陰にも大勢います。雨の日には博物館の入口に雨宿りに駆け込む姿も見れるようです。それにしてもバス停のそばに普通に座られると、だんだん感覚がマヒしてきて普通のことになって行きます…。
5. 浮雲園地
浮雲園地の鹿せんべい屋のワゴン中心に大勢群れていることが多いです。広いエリアなので鹿せんべいを持って走ったりしたくなりますが、鹿の怒りを買う場合がありますのでご注意を。
6. 浮見堂
池への映り込みが美しい浮見堂。普通に鹿が橋を渡っていたり、周りの斜面部分を走っていったりします。「浮御堂をバックに立つ鹿」まで狙って撮るとなると結構大変そうではありますが…。
7. 吉城川から睡神社
こちらは東大寺側のスポット。氷室神社から東大寺方面に入り、大仏殿前駐車場から直進、左手に南大門を見ながら少し行ったあたりです。
早朝に行った時に群れが寝ていました。また吉城川沿いに水場を歩く鹿を見ることができます。若干数は少ないかもですが、アート寄りの写真を狙いたい人は押さえておきたいスポットです。
8. 若草山ゲート付近
少し奈良公園のメインエリアから歩きますが、公園の中央部と比べると混雑が少ないです。不思議なことに公園の鹿と比べると、やたらお辞儀をして鹿せんべいをねだる様子が減り、中には人を警戒する子も。奈良公園内にいる時と、離れたエリアでは同じ鹿でも振る舞いを変えているのではという説もあります。編集長の印象としては、浮雲園地に比べると、若草山寄りの春日野園地の方では「鹿せんべい不要」の態度の子に遭遇する率が高いように思います。
とはいえ、店先でのんびり座っていたりするおおらかさは変わりません。
9. 飛火野から春日大社参道付近
ここからは春日大社のエリア。飛火野は「鹿よせ」の行事が行われる場所でもあり、池で水浴びする鹿が見られるなど、マストに行くべきスポットのひとつ。
早朝だと春日大社の参道の脇の林にとんでもなく多数の個体が座って休んでいる様子に出会えます。
注意したいのは、このエリアは奈良公園ではなく春日大社の所有地。三脚はNG(もっとも奈良公園でもイベント時や混雑時NGなので実質NG)です。また、林の中に立ち入ることも禁止されています。林への立ち入りについてはルールが守られていない印象で、特に早朝に行くと地元のカメラマンと思われる方が望遠を構えてずんずん林の中に入ってエサを撒いているのが見えたりします。ウチの媒体の性格上、あえてこの場に意見を記しませんが、その昔は春日大社の意に沿わない場合は釜茹での刑にされたこともあったらしいです…。
それはそれとして、奈良公園エリアに比べると、林や広い芝生、秋には紅葉など、アーティスティックな背景要素と鹿を組み合わられるため、本格的に写真作品を撮影するのであれば、やはり早朝にこのエリアに向かうのがベストと思います。一発ですごいのが撮れるかはまた別ですが。
10. 鹿苑近辺から春日大社
春日大社国宝殿から本殿にかけても大勢見られます。筆者が訪問した時は子鹿も多く見かけました。オモシロ系だと奈良公園内ですが、落ち着いた感じのvlogだとこっちが良いかもと個人的には思います。子鹿は警戒心が強く、また、人間のニオイがついてしまうと親鹿が育児放棄することがあるということで、なるべく離れて見守るのが良いということです。が、実際は親鹿とともに押しかけて来て鹿せんべいをねだる姿が多かった印象…。なお、リンクは鹿苑の「鹿せんべい自販機」に貼ってあります。
鹿せんべいは人間も食べられるの?
鹿せんべいの原料は米ぬかです。これを小麦粉と一緒に溶いて焼き上げており、砂糖や調味料などは一切使われていません。焼き上がり直後は、人間が食べても結構オイシイものらしいですが、衛生上食べない方が良さそうです。なお、鹿せんべいは8時くらいから奈良公園の各所で販売されています。多分15時から16時くらいまでは売られているようです。取材時点では200円でした。あと、確認していませんがどう考えても現金のみの雰囲気でした。それと、ネットで頻繁に炎上しているヤツですが、鹿せんべい以外のエサを与えるのは厳禁です。
奈良公園で愛犬とのツーショットはNGな理由
意外なことに鹿の天敵は犬なんです。古来から狼や野生の犬は鹿を捕食して来ました。現代でもペットショップで犬用のおやつとしての鹿肉や鹿の角が販売されていますね。奈良公園の公式サイトにもはっきりと書いてあります。
シカは臆病な動物で、犬はシカの天敵です。犬に驚いて走り出し、人身事故や交通事故の原因になる場合があります。また、身を守るために犬に襲いかかることもあります。奈良公園内を散歩するときは、必ずリードをつけ、犬をシカに近づけないでください。
※奈良公園のサイトより
「奈良公園内を散歩するときは、必ずリードをつけ、犬をシカに近づけないでください。」とあるように奈良公園に犬を連れて行くことは禁止されていませんが、愛護会のパネル展示によれば、上記の理由から愛犬とのツーショット写真を撮影しようとすることは、両者とも大変危険だということです。
奈良へのアクセスとおすすめの宿
奈良にはJR奈良駅と近鉄奈良駅があり、両駅は徒歩約20分の距離に位置しています。宿泊施設の数はJR奈良駅周辺の方が多い印象がありますが、奈良公園に近いのは圧倒的に近鉄奈良駅。奈良公園に近い宿を選ぶと、観光には便利ですが、一般的な飲食店や商店はJR奈良駅周辺に多いため、どちらを選ぶかは好みによります。
ところで、奈良は観光資源に恵まれているにもかかわらず、長年にわたり宿泊者数が国内で最下位クラスという状況が続いているのをご存知でしょうか?実際に、奈良は近畿圏では日帰りで訪れる場所というイメージが強いようで、先日のなら燈花会でも、大阪からの訪問者が多数見受けられました。観光庁の調査によると、奈良県の令和6年5月の宿泊者数は約23万人で、47都道府県中42位。ちなみに、1位の京都は約190万人です。奈良は京都や大阪にも30分ほどでアクセスができるため、奈良に宿泊しつつ京都観光を楽しむという選択肢も考えられます。
個人的に奈良でよく利用するのは「AN GRANDE HOTEL 奈良」です。近鉄奈良駅から徒歩1分という好立地にあり、奈良公園へも至近距離です。窓からは奈良家庭裁判所の中庭が見え、時間帯によっては鹿がのんびりと芝を食む姿も愉しめます。宿泊をお考えの方には、ぜひおすすめしたいです。
必要な機材はカメラではなく鹿せんべい?
ジャンルとしては野生動物撮影ということになるものの、鹿は人に慣れているため、感覚としてはポートレートに近いように思います。
欲しい画が決まっている場合は、望遠があった方が良いにこしたことはないですが、35mm単焦点とかで全然近くに寄れるので普通のケースだと十分なのではと。
むしろ大きなカメラを向けると鹿が不信感を抱かれる感じがするのでベストはスマホなのではないかと個人的に思います。※これはあくまで主観です、鹿せんべいを見せる寄ってくるので…!過去2本作った動画では、一部は一眼レフですが、ほとんどのカットをDJI Osmo Pocket 3で撮影しています。
でもって、どちらかと言えば鹿せんべいを朝鹿活で使うには前日に購入しておく、というのが一番大事かなと思います(笑)
参考リンクや文献
- 奈良の鹿愛護会:https://naradeer.com/
- 観光庁:https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html
- 「日本人と鹿―野生との共生1000年の知恵」


