《会場レポ》百段階段の秋の文化財見学「五感で体感する 文化財で四季のお花見」

東京都指定有形文化財「百段階段」(ホテル雅叙園東京館内、目黒)にて、秋の文化財見学「五感で体感する 文化財で四季のお花見」が2021年10月2日(土)より始まりました。※会期は2021年11月23日《火・祝》まで。

百段階段の「花」をテーマに、7つの部屋に描かれた四季の花々が紹介されるほか、映えるフォトスポット、五感で愉しめる関連展示など、日本各地の花の名所へ季節のお花見に出かけているかのような気分を感じられる企画展です。
編集部では開幕前日の10月1日に会場を取材、会場のようすを展覧会みどころとともにご紹介していきます。
展覧会のみどころと会場のようす
現在開催中の百段階段の秋の文化財見学「五感で体感する 文化財で四季のお花見」。早速、会場の様子とみどころを、写真とともにご紹介して行きます。なお、今回の記事は百段階段の部屋の並び順に対して順不同となっています。

頂上の間 編集部撮影
「花」をテーマに7つの部屋に描かれた四季の花々を紹介
今回の企画展は百段階段の「花」をテーマに階段廊下と7つの部屋に描かれた四季の花々を紹介していくというもの。百段階段は126枚もの日本画に囲まれており、桜や紅葉をはじめ、朝顔、牡丹、チューリップ、椿など50種類を超える春夏秋冬の花々の絵であふれています。

これらは昭和初期を代表する当代一流の画家たちの筆によるもので、表現方法も日本画や彩色木彫、螺鈿など実にさまざま。まさに百花繚乱の世界と言えるでしょう。館内は時間や場所を超え、本来は異なる季節に咲く花々の日本画が一堂に介した空間となっています。


階段廊下や天井の格子などに多数描かれる花モチーフの絵について、ひとつひとつ解説するボードが館内各所に設置されています。
下は星光の間の長島華涯(ながしまかがい)により「チューリップ」。百段階段の中でも珍しいチューリップの絵です。百段階段が完成した昭和10年の時点では、チューリップはまだ珍しい西洋の花だったそうです。訪れた人々の目にはチューリップはどのように映ったのでしょう。

味覚や香りを五感で愉しめる関連展示
「五感で体感」のコンセプトの下、花をモチーフとした江戸~昭和初期の艶やかな着物や装身具、薔薇のインスタレーションによる体験型フォトスポット、味覚や香りで愉しめる花のお茶・お菓子など、五感で愉しめる関連展示なども登場。
漁樵の間では、山田松 香木店(やまだまつ こうぼくてん)による「香りと花」の世界が堪能できます。実際に香りに包まれる鑑賞体験が愉しめ、リラックスした気分に浸れますよ。


静水の間の入り口には HARIO Lampwork Factory による、ガラスの花のアクセサリー。HARIOは大正21年創業の耐熱ガラスのメーカー。本展では主に花をモチーフにした作品が紹介されています。


静水の間 編集部撮影
石川県の伝統工芸「九谷焼」と江戸硝子を特殊な技術で接合した「九谷和グラス」。

静水の間 編集部撮影
展示されている作品の一部は、同じものをミュージアムショップで購入が可能です。展覧会毎にレイアウトを完全入替えしているので、もうひとつの展示室のよう。あ、これはあの部屋にあったね!などと探してみるとさらに楽しみも広がります。

草丘の間には花果寮がオープン

草丘の間 編集部撮影
草丘の間では「花果寮」がオープン。四季の花鳥画に囲まれて、花のお茶とお菓子を愉しめます。お茶は桜湯、黄金に輝くキンモクセイの花をイメージさせる華やかな福建省の烏龍茶である「ルピシア」の黄金桂(おうごんけい)、お菓子には「橘点心庵」の江戸花橘最中(えどたちばなもなか)と「ばいこう堂」の和三盆がついて1,000円(税込)。さらに花結メッセージカードももらえます。

星光の間にはフォトスポット「薔薇のインスタレーション」が登場
チーム・エンドレスファクトリーによる「薔薇のインスタレーション」。音楽とともに照明が薔薇の蕾を染め始め、蕾が大きく膨らんで満開の薔薇が咲き誇ります。音楽は約3分間。始まって2分で立ち位置マークに照明が入るので、写真撮影の絶好のチャンスとなるという参加型インスタレーションです。

星光の間 編集部撮影
花びらは2.4mmもの薄いもの、ロシア製のものなど材質の違うウレタンを重ね合わせて作られていて、無線制御で開く薔薇を前後からの照明が照らすことで微妙な光のグラデーションを作り出します。手作り作業で一ヶ月半もの期間をかけて制作したということです。

星光の間 編集部撮影

星光の間 編集部撮影
着物と櫛かんざし(澤乃井 櫛かんざし美術館)
清方の間は、東京・青梅の澤乃井 櫛かんざし美術館所蔵の着物と櫛かんざしが展示されています。その数は約80点。通常の美術展の特別展に匹敵するような点数がこの部屋に集まっており、かなりの見応えがあります。

清方の間 編集部撮影

清方の間 編集部撮影

清方の間 編集部撮影
※なお、こちらの展示物については、報道用に許可をいただいて撮影しています。今回、清方の間については写真撮影禁止となっていますのでご注意ください。
化粧と花 小町紅/伊勢半本店

頂上の間の奥に展示される小町紅(伊勢半本店)。稀少な紅だけで作られる日本の伝統的な口紅で、原料は山形県産の最上紅花。水を含ませた筆で溶くと一瞬で鮮やかな赤へと変化します。

頂上の間 編集部撮影

秋の文化財見学「五感で体感する 文化財で四季のお花見」の開催概要
- 開催期間:2021年10月2日(土)- 11月23日(火・祝) 会期中無休
- 開催時間:12:30-18:00(最終入館17:30)
- 会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
- 料金:当日券1,000円、学生500円(要学生証呈示)、未就学児無料
- 販売窓口:
- ホテル雅叙園東京[一般入場券]
- 公式オンラインチケット[一般入場券、グッズ付チケット、日時指定入場券]
- 主催 :ホテル雅叙園東京
- 照明協力:(有)エンドレスファクトリー
- お問合せ:03-5434-3140(イベント企画10:00 – 18:00)
公式サイトの展覧会ページ
東京都指定有形文化財「百段階段」
「百段階段」とは通称で、ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園3号館にあたり、1935(昭和10)年に建てられた当館で現存する唯一の木造建築です。 食事を楽しみ、晴れやかな宴が行われた7部屋を、99段の長い階段廊下が繋いでいます。 階段は厚さ約5cmのケヤキ板を使用。 階段で結ばれた各部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれています。
プレスリリース
リソース
- 取材ご協力:ホテル雅叙園東京さま
- 記事中の写真は全て編集部撮影によるもの